投資判断

第4章.投資判断


<目次>

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・主要な株価指標

企業分析に必須の指標など

 

・ファンダメンタルズ分析

企業分析についての考え方

 

・テクニカル分析

優位性のあるチャート分析



主要な株価指標


 

 

「優良企業であっても、株価が割高であったり、需給が悪い場合は、優良銘柄ではない」

 

 

 

「PER、PBR、ROE、ROA、EPS、BPSの定義と、それらの関係性を説明できない人は、投機家にはなりえても、投資家にはなりえない」

 

 

「PER20倍は、おおむね20年で投資元本が回収できるという意味であり、益利回りを計算すると年利5%になる」

#100÷PERで、益利回りが計算できます。PER30倍なら年利3.3%程度です。あくまで企業の純利益が現在の状態を維持できればという前提です。

 

 

「PERが高い成長株は、今は益利回りが低くても、投資家達が投資元本を将来的に回収できると考えている」

 

 

「PERが高水準になるほど、投資家達の期待が過剰に織り込まれているから、決算の度に相場が激しく反応する傾向にある」

 

 

「PERによる投資判断は、業績が安定しているディフェンシブ銘柄で最も有効である」

 

 

「PBR3倍とは、企業の時価総額が純資産の3倍まで買われているという意味であり、純資産がそれだけ大きく積み増されていくことが期待されている」

 

 

「ROEが安定して高い企業は経営効率が良く、自己資本や企業価値を着実に積み上げる基礎を備えている」

企業価値とは、企業全体の経済的価値です。 具体的には、企業の事業活動からもたらされる事業価値、投資有価証券や遊休資産などの非事業用資産、貸借対照表には表されない無形資産(ブランド力や人的資源、知的財産など)の価値を含みます。

 

 

「利益の大半を配当として毎年吐き出す企業ほど、純資産の蓄積が困難だから株価の伸びも鈍化する」

#逆に、現金を内部留保として無駄にため込むことも良いとは言えません。事業拡大や株主還元で有効活用することも重要です。

 

 

「ROEが高くて配当性向が低い銘柄は、投資家達が企業価値の向上を期待するから、PBRが高くなりやすい」

 

 

「ROAに比べてROEが極端に高い企業は、巨額の借り入れを行っている可能性があるから、財務状況を注視する必要がある」

 

 

「無借金経営は、積極投資すべき新規ビジネスを保有していないだけの可能性があり、必ずしもポジティブな投資の判断材料ではない」

 

 

「借金の多い企業でも、その資金を有効活用できている間は、むしろポジティブな投資の判断材料になる」

 

 

「配当利回りも割安度を測る重要な物差しであり、その値が上昇するほど割安と認識される」★

 

 

「配当利回りが40%の企業は、余った純利益の60%分が企業価値に加算され、それに応じた株価成長が期待できる」★

 

      

「PERやPBRで銘柄分析する際は、同じ業種やライバル企業の平均値と比較検討しなければならない」

 

 

「各業種、各銘柄のバリュエーションは、時代や社会背景によって、たえず見直されている」

#バリュエーションとは、適正と思われる株価です。

 

 

「景気後退で企業業績が悪化すると、優良な割安株でもPERが跳ね上がって割高に見えることがある」

 

 

「景気後退期は、PBRなど企業価値に基づくデータを重視すると、株価の下値メドを推定しやすい」

 

 

「日経平均のPBR(加重平均)の下限は、歴史的暴落で0.8倍台、数年おきの暴落で1倍が目安になる」★

 

 

「リーマンショック前夜の日経平均PBRは1.5倍と高めだったから、その後の下落率は50%弱と苛酷を極めた」★

 

 

「競争優位性のあるビジネスで一株当たり純利益(EPS)を成長させる企業だけが、健全な増配と株価上昇を実現できる」

 

 

「競争優位性のある企業は、優秀な従業員が、高く売れるモノやサービスを生み出すことで、高い利益率を誇る」

 

 

「従業員の給料をカットして利益を上げるような企業は、従業員の質も、ビジネスの質も改善が求められる」

 

 

「企業が競争優位性を獲得するために必要な資質は、他の企業では作れない高付加価値製品を展開する開発力や、世界的なブランド認知を獲得する広告技術だ」

 

 

「利益率が高く競争力のある優良企業は、一見割高と思われる水準まで株価が買われる傾向にある」

 

 

「成熟企業でも、自社株買いで株数を減らす現金余力があれば、EPSを確実に成長させられる」

 

 

「時価総額が同じでも、増資などで株数が増加すれば、その瞬間は一株当たりの価値が下がってしまう」

#時価総額=株価×発行済み株式数です。増資とは、企業が新規に株式を発行して(=株数増加)、資金を外部から調達することを指します。

 

 

「日経225採用企業群の一株当たり純資産(BPS)は長期的に右肩上がりを続けているため、日経平均株価の理論値がいずれ4万円を突破することは疑う余地がない」★

 

 

「外食や食品関連で株主優待が充実した銘柄は、明らかに割高な水準で株価が推移する傾向にある」

 

 

「信用買い残や信用倍率の値だけで需給を分析すると、判断を大きく見誤る可能性がある」

 

 

「需給の良し悪しは、信用買い残が1日の出来高に対して何倍の規模なのかを分析することでよく知ることができる」

#信用買い残100万株、売り残5万株、つまり信用倍率20倍と一見需給が悪そうでも、1日の出来高が200万株あれば、100万株の買い残を消化することは、そう難しくないと考えられます。

 

 

「騰落レシオは、全体地合いの過熱感を時系列で確認できる優れた指標である」

 

 

「指数の比較は、ドル建てチャートで統一しなければならない」

#『円建て』の日経平均と『ドル建て』のNYダウを比較しても、相対的にどちらが優位なのか判断できません。ドル建ての日経平均のチャートは各種サイトで閲覧可能です。海外の投資家はこちらをよく見ています。

 

 



ファンダメンタルズ分析


 

 

「損益計算書(P/L)とバランスシート(BS)の役割と、両者の関係性を説明できない人は、投機家にはなりえても、投資家にはなりえない」

 

 

「財務諸表を読めない長期投資家は、レントゲンを読めない医者や図面を読めない建築家と同じくらい無能だ」

 

 

「ファンダメンタルズ分析だけが、長期投資の不安や恐怖を打ち消す根拠になる」★

 

 

「握力の源は、ファンダメンタルズにある」

 

 

「個別株投資のデメリットは、手間と時間がかかることだが、その泥臭さが長期保有の不安を軽減するというメリットに繋がる」

 

 

「インデックス投資は一見、手間暇がかからないが、次々に登場する新しい投資商品に目移りして、結局時間を取られやすい」

 

 

「インデックス投資は、自分が苦労して編み出したアイデアではないから、自分のものにして継続することが難しい」

 

 

「企業分析の一番のポイントは、自分の投資判断を正当化する情報ばかりに目を向けないことだ」

 

 

「長い時間をかけて調べ上げた企業ほど、好意を抱いて投資したくなってしまう」

 

 

「客観的なデータも、主観でとらえると無価値な思い込みになる」

 

 

「好きな企業に投資するのではなく、業績と株価が伸びる企業を好きにならなければならない」

 

 

「銘柄に惚れるのは危険だが、財務諸表に惚れるのは悪くない」

 

 

「投資初心者は、会社四季報の内容理解を学びの軸として、書籍やネットで必要な知識を蓄えるといい」

 

 

「会社四季報の魅力は、ページをめくる度に、自分の知らないビジネスを発見、吸収できることにある」

 

 

「四季報のデメリットは、速報性に乏しく、掲載内容がタイムリーとは言えない所にある」

 

 

「未来を予測して今の相場に対峙するというよりは、今の相場に対峙すれば未来を予測できるという方が正しい」

#株価は景気の先行指標で、数ヵ月~1年先の経済の状態を表すと言われます。未来予想図を今の相場から感じ取ること、さらに、その予想図を織り込んでいない出遅れ資産に資本を投じることが大切です。

      

 

「企業が現在発表している業績の見通しと、未来の実際の業績にギャップが発生するほど、株価は大きく変動する」

 

 

「良い材料が出て利益を得ても、それが不測の事態であれば、ラッキーと思わず危機感を抱かなくてはならない」

#逆に、不測の悪材料が出て損失をこうむることもあるからです。

 

 

「四季報で『連続最高益』などと紹介された頃には、高い水準まで株が買われていたり、業績面で天井をつけている場合も多い」

 

 

「個別株投資のメリットは、株主の信頼に応えられる超一流企業を、インデックスから厳選できる所にある」

 

 

「個別株投資とは、自分独自の超優良インデックスを作成することであり、銘柄選択において一切の妥協は許されない」

 

 

「個別株投資の長期的なリターンは、企業のIR資料を読み込む時間量に、おおむね比例する」

 

 

「業績も株価も伸びない企業のIR資料は、読めば読むほど不可解で頭を混乱させる」

 

 

「IR資料を毎期必ず目を通さなければ安心できないような企業は、優良企業ではない」

 

 

「一つの企業についてゆっくり丁寧に考え抜く習慣が、多くの企業を瞬時に見極める選球眼を養う」

 

 

「決算説明会や経営者の肉声など、全てのIR資料が日本語で表される国内企業への投資は、スムーズで確実性が高い」

 

 

「経営者がTVやネットなどのメディアで頻繁に露出し、カリスマ的な扱いをされ始めると、その企業の相場は天井が近いと思った方がいい」★

#経営者がカリスマ的な扱いを受けている(=過大評価されている)ということは、その企業の株価も過大評価されている可能性が高いです。

 

 

「米国株を分析する際は、英語の資料も活用しないと、現地の人より量も質も劣る情報で戦うことになる」

 

 

「海外への投資は、企業分析や相場分析を誤るリスクが高いから、分析不要なインデックスが現実的な選択肢になる」

 

 

「国内企業への投資は、海外投資家が触れられない肌感覚の情報を武器に勝負できる点で優位性がある」

 

 

「他人の銘柄分析は参考になるが、推奨銘柄を紹介したり、相場の上げ下げまで予測する人とは、無限の距離を置いたほうがいい」

 

 

「賢明な投資家は、間違っても自分のオススメ銘柄を発表したりはしない」

 

 

「『上昇が期待できる優良銘柄を紹介します』というセリフを意訳すると、『楽して稼げる方法を教えます』となる」

 

 

「証券会社や情報商材屋に騙される投資家は少ないが、無償で情報提供を行う投資系インフルエンサーに騙される投資家は後を絶たない」

 

 

「企業の潜在的な価値に目線を固定しないと、日々の値動きや経済ニュース、人々の意見に、一生振り回される」

 

 

「総合商社がバフェット銘柄に選ばれた背景には、企業価値が異様に過小評価されていたという事実がある」

 

 

「自分が企業を正しく評価しても、多くの人が間違った評価をしてくれないと、大きな利益には繋がらない」★

#多くの人が正しく評価した時に利益が得られます。

 

 

「企業に対する自分の評価と他人の評価の乖離が、キャピタルゲインの源泉である」

 

 

「中期経営計画で超強気な業績目標や株主還元策を打ち出す企業ほど、何食わぬ顔でその期待を裏切る」

 

 

「景気や市況の影響で年ごとの利益に大きな格差が出る銘柄は、PERで投資判断がしにくい」

 

 

「高水準の配当を毎年支払えることは、企業の財務健全性やキャッシュ創出力を測る重要な物差しになる」★

 

 

「自社株買いと安定的な増配をバランスよくこなす企業はビジネスが順調であり、利益成長の奥深くにまで気が回っている」★

 

 

「自社株買いは、不定期かつ株主の強制力が及ばない還元策だから、毎年の投資リターンを正確に把握できない」★

 

 

「グローバル企業は外貨建資産を大量に所有しているから、それらの企業に投資している株主は、自ら外貨建資産を持つ必要はない

#他にも、大企業は不動産を多く所有していて、その価値が株式に組み込まれていますから、株主自身が不動産にあえて投資する必要はありません。もちろん、不動産経営に興味がある場合は、取り組んでOKです。

 

 



テクニカル分析


 

 

「テクニカル分析は、市場参加者のコンセンサスを読み解くためにある」

 

 

「長期投資では、ファンダメンタルズ分析を主役に、テクニカル分析を名脇役として働かせるのが良い」

 

 

「ファンダメンタルズ分析は複雑でも構わないが、テクニカル分析は単純でなければならない」

 

 

「テクニカル分析は、取引を円滑に進めるための手段だから、その手法はシンプルであるに越したことはない」

 

 

「テクニカルな手法が複雑化すると、いずれは分析不能に陥り、取引が難航する」

 

 

「テクニカル分析にのめり込むと、テクニカル分析自体をさらにテクニカル分析するという不可解な事態を招く」

#例えば「RSIがダブルボトムを形成して上昇トレンドに転じた」といった具合です。

 

 

「インジケーターの多用は、単純な相場を複雑に見せる」

 

 

「相場を動かす群集心理の正体は、複雑な文学的感情ではなく、自分だけは助かりたいという単純なエゴである」★

 

 

「相場の動きが単純に見えていない時は、勝負に出なくていい」

 

 

「値動きが大きい相場ではなく、値動きが素直な相場で勝負を仕掛けなければならない」

 

 

「買いの衝動に駆られている時は、買いの判断に都合がいいシグナルばかりを無意識に探そうとする」

 

 

「日足を見て安値を掴んだつもりでも、月足で見ると高値を掴まされている場合があるから、マクロな視点は常に大切だ」

 

 

「日足、週足、月足など、3つ以上の時間足を用いて説明されていないチャート分析は、もれなく不完全である」

 

 

「短期足の押し目買い局面が、長期足の戻り売り局面であることは多い」

 

 

「トレンド以外の相場は全てレンジとみなしてよく、レンジを強く意識するほどトレンドの初動を掴める」

 

 

「人気の優待株や配当性向が高い優良ディフェンシブ銘柄は、安定的なトレンドやレンジを形成しやすい」

#配当性向が高い優良ディフェンシブ銘柄とは、安定収益ビジネスモデルで配当性向が70~90%程度の銘柄を想定しています。

 

 

「グロースの相場は、投資家達の主観や期待をかなり織り込むから、客観的な企業分析が報われにくい」★

 

 

「グロース投資は、需給・チャート分析に基づくテクニカルな手法で機械的に処理するほど投資効率が上がる」★

 

 

「NASDAQなどグロースが主導する指数は、レンジの期間が短く上下のトレンドが長期化しやすい」★

 

 

「チャート形状が売りに転じそうな時は、損切り・利確ラインにこだわらず、即時売却してもいい」★

 

 

「下値支持線や上値抵抗線は、週足・月足などマクロな視点で確認できるものほど、信頼性が高い」

 

 

「過去に出来高が多かった価格帯は、大勢の人が意識しているから、支持線・抵抗線になりやすい」

 

 

「出来高を伴って週足や月足の抵抗線を明確に上抜けたら、有力な好材料で潮目が変わった可能性が高い」

 

 

「株式投資がFXより有利な点は、出来高や歩み値が常に把握できる点にある」

 

 

「短期間で相場が急落すると、大勢の投資家が逃げ遅れるから、需給が悪化して上値回復が困難になる」

 

 

「高値突破は、需給を改善する何よりの特攻薬になる」

 

 

「安定した相場では、値幅調整が冷静に行われ、大勢の人の総意によって節目の株価が慎重に規定される」

 

 

「テクニカル・需給分析の本質は、大勢の人の意識や相場の現状を、客観的に読み解くことにある」

 

 

「下値抵抗線とは、簡単に言えば、大勢の人がぜひ買いたいと思っている株価のことである」

 

 

「一目均衡表など、活用する人が少ない指標は、よほどの優位性を見出していない限り、使う価値がない」

 

 

「企業分析に熱中するほど、テクニカルな手法を無意味なものと結論付ける心理が強く働く」

 

 

「企業の価値に対する市場のコンセンサスは、おおむね200日SMAなど長期の移動平均線で表現されており、日々の相場変動は、短期的な群集心理が生み出すノイズに過ぎない」

 

 

「チャート・パターンを単に暗記するのではなく、チャート形状から買いと売りの勢力の攻防を感じとろうと努めることが大切だ」

 

 

「買いと売りの勢力が一定の価格帯で拮抗し続ける相場を、レンジ相場という」

 

 

「買いの勢力が売りの勢力に勝っている局面では、相場の下値が切り下がることはあり得ない」

 

 

「上昇トレンドを継続するためには、上値が切り上がることより、下値が切り下がらないことが重要である」

 

 

「三角保ち合いとは、買いの勢力と売りの勢力が衝突して株価の妥協点を決定するプロセスであり、新たなトレンドへの布石となる」

#三角保ち合いは3パターンあり、1は先行き不透明、2は上昇、3は下落に転じる可能性が高いとされます。

SMBC日興証券サイトより

 

 

「短期足でも長期足でも、新たなトレンドが発生する直前には、100%の確率で、三角保ち合いが発生する」

 

 

「新高値突破は、買いの勢力の完全勝利を意味するが、戦いの疲れを癒すために、その後しばらく相場が小休止することも多い」

 

 

「単なる需給的な踏み上げによって高値を突破した場合は、その後の相場が冴えないことも多い」

#踏み上げとは、空売り(ショート)を仕掛けた人達の買戻しや損切りによって、相場が上昇することです。

 

 

「大相場のフィナーレを飾るのは、売りの勢力の壮絶な損切りであるケースは少なくない」

 

 

「上ヒゲや下ヒゲが多いチャートは、売り買いが交錯しており、相場の動きを捉えることが極めて難しい」

 

 

「優位性の高いエントリーポイントは、買いと売りの勢力の優劣がはっきりしているから、揉み合いが発生しにくい」

 

 

「バリュー相場は上昇するほど減速して陽線が短くなり、グロース相場は上昇するほど過熱して陽線が長くなっていく」★